キャリーバッグの作り方
皆様こんにちは!松下ラゲッジ株式会社営業担当です。
唐突ですが、本日は『キャリーバッグ』の作り方についてご説明をしたいと思います。
社内のスタッフからのリクエストもあり、書いていこうと思います。
分かりづらい内容且つ伝えづらい表現が多いので中々読みにくいとは思いますが、是非最後までお付き合いいただければありがたいです。
バッグメーカーに勤め始めて15年。入社当時は弊社の主力商品の一つだった『キャリーバッグ』。たくさん生産をし、世に送り出してきました。いっぱい失敗もしました。本当に作ることが難しい鞄でした。当時は主に中国で生産をしておりましたが、日本でも若干数ですが生産をしていました。
ですが、後程作り方のところでご説明しますが、とにかく普通の鞄と比べて大きい、そして『ピアノ線』というものをPVCでできた『パイピング』と呼ばれるもので巻くのですが、これがまた難しい。今では日本国内でキャリーバッグを量産できるメーカーさんは少ないのではないでしょうか?
さて、キャリーバッグとひとえに言いましても色んな種類があります。ポリカーボネートという材質でつくられたハードケース。生地や革で作られたソフトケース。はたまたジェラルミンやアルミなどで作られたものもあります。日本では軽くて強く、防犯面でも安心感があるということでハードケースが主流と感じます。
その中で弊社が得意としていたのはソフトキャリーケースという種類です。
ソフトキャリーケースは、外にポケットを付ける事も出来ますし、これはこれで利便性は高く感じます。あくまで個人的ですが・・・。
そのソフトキャリーケースにも、2輪・4輪とありますし、キャリーバーと呼んでいるのですが、キャリーバッグを引っ張るときのアレです。がちゃんがちゃんと長さが変わるアレ。そのキャリーバーも鞄の外についているもの中にに埋め込まれているものと様々あります。
因みに、諸説あるとは思いますが、私が聞いて納得したのは、日本は4輪が主流、欧米は2輪が主流だそうです。日本は道もアスファルトやコンクリートなどで舗装されており比較的フラットな環境が多く、また日本人は欧米人に比べ身体が小さいこともあり力が無い為4輪の方が転がしやすいと。逆に欧米では石畳みの道などがあり、4輪を身体の横で滑らせるなど出来ないから2輪が主流なんだ・・・と。確かに・・・って思った記憶があります。
こちら、諸説あると思いますのであくまでご参考程度に・・・。
私自身、日本で使うなら断然4輪かなぁと思ったこともあったのですが、4輪は4輪で弱点が・・・。電車移動の時、シートに座って股の間にキャリーバッグを挟み、うたた寝してしてしまってハッと気づいたら一人歩きしているなんてことも。その点2輪なら一人歩きせずにそばに居てくれるので安心です。一長一短あります。
今回の記事では、2輪キャリーケースについて、作り方を少しご紹介できればと思っております。
①デザイン編
何といっても鞄づくりの際の一番初めの作業、『デザイン』です。サイズや仕様、使う素材等を考えます。
普通の鞄だとある程度自由が利きますが、キャリーバッグの場合は『サイズ』が重要です。
皆様も飛行機にのるときにご経験があると思いますが、『機内持ち込みサイズ』『手荷物預けサイズ』なる制限です。用途に応じてサイズ内に収まるようにサイズ設定をしないといけません。
またキャリーバーの種類にもデザインが左右されます。写真を見ていただくと分かると思いますが、埋め込み式でも上がかくっと90度のもの、少しアールになっているもの。他にもいろいろな種類があります。この形のどれを選ぶかによりデザイン的な制限が出てきます。
そして2輪か4輪か・・・。基本的にキャリーバーとタイヤは組み合わせることができますので、本当にいろいろな形を作ることが出来ます。制限があるようでないみたいな感じになってしまいました・・・。でも、やり始めるとすごい制限がある感を感じます。
②縫製編
デザインが決まれば縫製に進みます。この縫製の部分については、基本的には他の鞄とそう大差はないです。しかし・・・まずは大きい。一つ一つの裁断物が大きいので縫い合わせていくとめちゃどんどん大きくなるので、縫っている人は大変です。大きい=縫い合わせる距離も長い=時間がかかる=コストがかかる…という方程式にどうしてもなるんですよね・・・。
そして、基本的にはと申し上げたのは、この後仕上げ編で出てきますが、袋状に縫いあがったものに『ハニカム』という枠を入れていきます。この『ハニカム』、枠というだけあって固いものなので、寸法がきっちりしています。(逆にきっちりしていないとキャリーバーやタイヤが取り付けられなくなります。)なので、当然袋状に縫ったものの寸法もきっちりしていないと、枠を入れた後ぶかぶかシワシワになったり、逆にきついとハニカムがぐにゃっと曲がったりします。縫製の正確性が求められます。
余談ですが、生地のキャリーバッグを作るときはポリエステルが断然いいです。ナイロンは気温や湿度に影響を受けやすく、湿度が高いと生地が伸びますし、乾燥していると縮むという性質があります。一度キャリーバッグをナイロンで作ったのですが、中国が湿度が高い環境の時に完成し、とってもきれいに仕上がっていました。日本に出荷し、店頭に並びました。店頭でスポットライト浴びてたみたいです。そしたら・・・生地が縮んでハニカムが生地の伸縮に負けてぐにゃ~っとひょうたんのように曲がったと・・・。ゾッとしました。作り直しで対応しましたが、本当にご迷惑もお掛けしましたし、大変でした・・・。
すみません、元に戻ります。前述で少し触れましたが、『ピアノ線』です。これをパイピングなるものを巻きながら縫っていくのですが、針がこのピアノ線の上を走ってしまうと・・・パキン!と折れます。しかも工業用ミシンで高速で縫っているので、折れた針が飛んでいきます。私は実際見たことはありませんが、弊社が自社工場があった時に生産をしていたら針がピアノ線の上を走り、折れた針が飛んで窓ガラスにひびが入ったなんて話も聞きました・・・。
正確な縫製技術が必要な工程です。今ではピアノ線を量産で巻ける職人さんも本当に一握りになってしまいました。
③仕上げ編
袋状のものが出来上がると、その中に『ハニカム』をぐいぐいぐいっと入れていきます。今回は埋め込み式キャリーバーなのでハニカムに切り込みを入れ、そして袋にも切れ込みを入れます。ハニカムがセット出来た後キャリーバーを埋め込むための穴です。(タイヤも入れなきゃなので、ハニカムの下のコーナー2か所も切れ込みをいれてます。)
ハニカムを入れ終わると、次はキャリーバーとタイヤをハニカムに固定します。
キャリーバーとタイヤを固定するために中空鋲という鋲を使って止めますが、この鋲を挿す穴をあけなければいけませんので、キャリーバーとタイヤにもともと空いている穴の位置にしるしをし、ドリルで穴を空けます。
そして写真の鋲打ち機でがちゃんがちゃんと鋲を止めていきます。
中国のキャリーバッグ生産工場へ行くと、この鋲打ち機がずらーーーっと何十台もあり、がちゃんがちゃんすごい音を立てて量産をしていました。
・・・文字で書くと簡単そうに感じてきました。これすーごい大変な作業なんです。しかもキャリーバッグの仕上がりを左右する重要な工程です。
④検品・梱包編
①~③が終わり、完成しました!そして検品と梱包に入っていきますが、まず検品。鞄だと、汚れや傷・縫製不良が無いか?等いくつかの検品項目に沿って検品をしますが、キャリーバッグに関してはこれにプラスして、キャリーバーが正常に動くか?タイヤが斜めに取り付けられていないか?タイヤはスムーズに転がるか?なども検品をします。タイヤが少しでも斜めに取り付けられているとお客様が使用されつづけるとタイヤのすり減り方が偏り、タイヤが早く破損してしまう恐れがあります。
また、大きいので梱包したあと保管するにも場所を取ります。大体1つの段ボールに2つないし3つしか入りません。
これでやっと完成、納品です。
と、ここまで自分で書いてみて、大変な鞄だなぁ~と思いながらも、やはり普通の鞄と違いキャリーバーやタイヤ、ハニカム等特殊な資材を使うって楽しいなと感じてしまいます。
工程を文章で伝えるのが難しく、うまく伝わったか心配ですが、キャリーバッグって技術やノウハウがいるんだなーくらいでも伝わっていればうれしく思います。
OEMバッグメーカーとして、小さなポーチやエコバッグから、本日ご紹介したキャリーバッグまで、本当に作れる商品のふり幅は大きいなぁと感じます。これも創業81年の歴史に裏打ちされているのだなと・・・。諸先輩方が築き上げてきた技術や知識・ノウハウをこれからも活かし、また新たなノウハウも手に入れ、お客様やお取引先様と共に成長していければと思っております。
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